有効な議論が成されなかった理由は、投票率が上がることに意味があるかないかの議論には意味がないにも関わらず、このことに議論が終始したためです。
肯定側は、投票率が上がることをメリットとして挙げたわけではないからです。
肯定側はメリットの発生過程の一つとして、投票率が上がることを挙げたに過ぎません。
したがって、「投票率が上がるか」または「その結果、次の過程(ここでは、今まで投票へ行くよう促すためのPRに費やしていた費用を政策を訴えることに使う)が発生するか」を議論する意味はあっても、投票率が上がることに意味があるかを議論する意味はありません。
おそらく否定側は、「投票率が上がって民意が政治に反映される」というメリットを想定して、「投票率が上がることに意味がない」という反論を用意しておいたのでしょう。
そこで、肯定側が「投票率が上がる」と言ってきたので、その後の議論をよく聞かず、用意しておいた反論を述べてしまって失敗してしまったのでしょう。
それでは、否定側はどのように反論すればよかったでしょうか?
否定側は肯定側の議論をよく聞いて、議論のリンクを切る必要があります。
肯定側の議論は以下のようなリンクとなっています。
1.投票率が上がる。
2.今まで投票へ行くよう促すためのPRに費やしていた費用が不要になる。
3.余った費用を政策を訴えることに使う。
4.政策中心の政治になる。
5.政治に民意が反映される。
この議論で、リンクが弱いのは2−3と3ー4です。具体的には以下のような疑問が生じます。
- 余った費用をなぜ政策を訴えることに使うのか?今までのように、名前の連呼のために使うことにならないか?
- 仮に余った費用を政策を訴えることに使うとしても、その費用はどのくらい多いのか?
- 余った費用を政策を訴えることに使ったくらいで、なぜ政策中心の政治になるのか?
以上のような点を突いていけば効果的だったでしょう。
一方、肯定側は、否定側の「投票率が上がることに意味があるか」という議論にのるべきではありませんでした。
『「投票率が上がる」ことは我々のメリットの発生過程であり、我々は「投票率が上がる」こと自信が良いことであるとは述べてません。
否定側は見当外れな反論をしています。』と議論を突っぱねてしまうべきでした。
このように、相手の反論が全く見当外れなことは良く起こります。
このときに相手の議論に引きずられて、議論にのってしまわずに、門前払いする判断力が大事です。