1.国民の政治離れの原因は、政治が民意を反映していないからである。
2.政治が民意を反映していないのは政治家の責任である。
3.政治家に責任があるのに、選挙の棄権に罰則を設けることは、責任を国民に転嫁するものである。
4.不当に責任を転嫁されると、国民の不満が増加する。
これに対して、肯定側は「責任は、不適切な政治家を選ぶ国民にもある」として、上記2を責めてきました。
一方否定側は、肯定側の「責任は、不適切な政治家を選ぶ国民にもある」を真っ向から否定しようとしましたが、結局、否定しきれずに不利な状況に追い込まれました。
否定側は、「責任は、不適切な政治家を選ぶ国民にもある」かという論点を捨てて、別の点から肯定側に反論すべきだったでしょう。
なぜなら、政治が民意を反映していない責任は、政策を施行する政治家とその政治家を選んだ国民の両方にあると考えるのが妥当なところで、このような比較的明らかなことを無理やり別の方向、つまり「責任は政治家だけにある」に持っていくことは、よほど力の差がないかぎり無理だからです。否定側はこの難しい説得を試みて失敗してしまったのです。
では、否定側はどういう論点で肯定側に反論すべきでしょう?
ここで注意したいのは、肯定側は「責任は、不適切な政治家を選ぶ国民にもある」と言っているだけで「責任は政治家にある」を否定していない点です。
つまり、肯定側の意見は、一見、否定側の議論の第二点目の「政治が民意を反映していないのは政治家の責任である。」を否定しているようですが、完全には否定しておらず、逆に政治家にも責任があることを暗に認めています。
したがって、肯定側の意見が正しいとしても否定側の議論のリンクを完全に切ったことにはならないのです。
このことに気づけば、否定側は次のように反論できたでしょう。
『仮に政治家を選んだ国民にも責任があるとしても、国民不在の政策を行っている政治家にも責任はあります。
このことは肯定側も否定していません。
両者に責任があるなら両者にそれを負わさなければなりません。
政治家にも責任があるにもかかわらず、
国民にだけ責任を負わせれば国民の不満は増大します。』
このように反論されると、今度は肯定側が苦しくなります。
肯定側の主張を認めてもまだ、否定側の議論が成立してしまうからです。
かといって、もはや別の論点から責めることはできません。(ニューアギュメントになるから)
この議論に見られるように、白いものを黒いと言いくるめようとしても、墓穴を掘るだけです。
相手の主張を否定することばかりを考えず、相手の主張が成立しても、自己の主張が成立しないか検証することも大事です。